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2023.02.22

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保育士さん必読!『加配保育』の現状と課題

保育士として知っておくべき、『加配保育』の現状と課題

発達障がいなどにより特別なサポートを必要とする子どものために、保育士を追加で配置する加配制度。そこに関わる保育士は「加配保育士」「加配の先生」と呼ばれ、クラス担任だけでは行き届かない日常生活の補助や、友だちとの関わりの援助などを担います。障がいを持つ子ども、加配を行う保育園が増え続ける中、保育士としてその実態をきちんと理解しておきたいですね。

DHD(注意欠陥・多動性障がい)、ASD(自閉症スペクトラム)、SLD(学習障がい)など、最近は大人の発達障がいについても耳にする機会が増えました。有名人がカミングアウトしたり、発達障がいをテーマとするテレビドラマが放映されたり、注目度が高まっていることは間違いないでしょう。医療の進歩や基準の明確化により、これまで落ち着きがない子、口数の少ない子として捉えられていた児童が、診断により認定されるようになったこともありますが、発達障がい児は着実に増えてきています。
実際にその数は2010年の4万5369人から、2020年には7万9260人にまで増加。障がい児を受け入れる保育施設の数も2010年の1万3950ヵ所から、2020年は1万9965ヵ所に。出生数が年々減っていることを加味すると、10年で倍増に近い増え方ですね。そして障がい児保育に携わる職員も、いまや4万5000人以上にのぼるといわれています。
実は保育士の加配に関して、国の明確な法律はありません。厚生労働省が「概ね障がい児2名に対し、保育士1名を水準とする」との目安を示しているものの、各自治体が独自に運用しているというのが実情。一般的には「3歳児以上」で、「障がい者手帳の保持者」「特別児童扶養手当対象者」「医師などの診断を受けていること」が加配認定の基準となりますが、これも一律ではありません。さらに加配保育士1人が見る障がい児の数も1〜4人とバラバラです。
ある調査によると加配保育士の配置について「具体的な基準はない」と答えた市町村が42.5%もあったといいます。だから「A市では加配認定がつくはずなのに、B市ではつかない・様子を見る」といったケースも珍しくありません。こうした基準のあいまいさも課題のひとつとされています。
具体的には「クラス活動に参加できるよう見守る、サポートをする」「洋服の着脱・排泄や食事などの日常生活の手助け」「パニックや不安になった際のフォロー」「保護者対応、保護者との連携」といった仕事になります。障がい児の専属担当として「何ができて、何が苦手なのか」を知り、しっかりと気持ちを聞いて、興奮を鎮めて落ち着かせてあげたり、友だちとのコミュニケーションを円滑にしてあげたり、という役目を担います。
加配担当をする上で特別な資格は要りません。何より大切なのは、子ども・保護者の声に耳を傾け、対話を繰り返し、一緒に歩いていくこと。その中で信頼関係を築くことだといわれています。ただ担当する子どものカリキュラム作成も行いますので、障がいに関する知識や理解は不可欠。園によっては障がい児保育の研修やセミナーなどの受講経験者、精神保健福祉士や特別支援学校教諭などの有資格者を優先採用することもあるようです。
最近、保育士さんから「グレーゾーンの子どもが増えた気がする」という声をよく耳にします。「グレーゾーン」とは診断や認定を受けておらず、明確な障がい名はないものの、その兆候がある子どもたちのこと。例えば「食事途中も動き回る」「道順や物の位置などに強いこだわりがある」「先生や友達とうまくコミュニケーションが取れない」「過度なイヤイヤ」といった様子が見られ、保育中の配慮が必要となります。
発達障がい者支援法では「発達障がいの診断基準に満たない場合でも、疑いがあれば必要に応じて支援を受けられる」とされていて、園によっては加配とは別に補助の保育士を一人多く配置するなどの対応もしているようです。しかしまだ「グレーゾーン」の基準は未整備状態。「ウチの子はまだ小さいから」「発達がゆっくりなだけ」と、なかなか診断を受ける決断ができない保護者も多く、今後の大きな課題になるかもしれません。
ただ、障がい児担当は貴重な経験であり、保育士としての視野を広げることにも繋がります。また保育士等キャリアアップ研修の一分野にも「障がい児保育」が設定されていますし、研修費用の一部に対する補助もあります。私たち『ほいとも』でも加配保育についてのキャリアアドバイスなどを行っていますので、関心がある、もっと詳しく知りたいという人はぜひ一度、相談してください。
■監修/新谷ますみ
保育園運営本部で勤務。短大の幼児教育学科を卒業し、保育士・幼稚園教諭資格を取得。結婚後も仕事を続け、出産を機に一度退職。子育てがひと段落して、職場復帰。大切にしている言葉は「失敗しても、じっくり待つ」。

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