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2023.10.11

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『インクルーシブ保育』が、保育士や子どもたちにもたらすものとは?

『インクルーシブ保育』が保育士や子どもたちにもたらすものとは?

最近、『インクルーシブ保育』という言葉をよく耳にするようになりました。「inclusive」とは「包括的な」「すべてを含んだ」という意味。つまり障がいの有無や国籍にかかわらず、すべての子どもたちを受け入れ、同じクラスで一緒に保育を行うことです。外国籍の子ども、発達障がい・多動性障がいなどを抱える子どもが増える中、海外で積極的に行われてきた『インクルーシブ保育』を導入する保育園や幼稚園が日本でもどんどん増えています。

かつて日本では障がいを持つ子どもたちに特別学級や支援教室を用意する「分離教育」「分離保育」が主流でした。しかし時代の流れの中で、障がいのある子どもを通常学級に参加させる「統合教育」「統合保育」が行われるようになってきました。ただ、この方法では「同じ環境で同じ教育・保育をする」ということばかりが重視され、障がいのある子どもへの配慮が足りていないという指摘もあります。
「別々のものを一つにする」という統合(インテグレーション)に対し、インクルーシブは「元来、子どもたちはみんな一緒で、国籍や障がいは個性の一つ」という考え方に基づいているようです。その「個性」を尊重するため、一人ひとりに合わせて別々の教育プログラムを組んだりもします。多数派の中に少数派を参加させるのではなく、多数派・少数派どちらの立場も大事にする。その中で個人差や多様性を認め、一人ひとりの個性を伸ばし自発性を育む。そんなインクルーシブ教育の理念を保育現場に落とし込んだのが『インクルーシブ保育』です。
『インクルーシブ保育』を実践する保育園では、幼い時期からいろんな個性や背景を持つ子どもたちが触れ合うことになります。その中で多様な価値観が芽生え、一人ひとりの違いを認識することができます。さらに子どもたちは違いを認識した上で、自然にコミュニケーションの方法を工夫したり、思いやりを持って接したり、助け合ったりするようになります。また外国籍の子ども、障がいのある子どもと一緒に過ごすことで、差別や偏見の目を生みにくいともいわれています。立場が違う子ども同士、トラブルが発生することもあるでしょう。でも時にはぶつかったりすれ違ったり、時には譲ったり歩み寄ったりしながら、柔軟な対応力や豊かな感受性を身につけていくといわれています。
もちろん保育士にとっても、様々な子どもたちと接することは貴重な経験になります。障がいを持つ子どもへの支援方法や療育、一人ひとりの発達に合わせた保育のしかた、臨機応変な対応力…。身につく知識やスキルがたくさんあります。また国籍の違い、障がいの有無などをまったく気にせず一緒に遊ぶ子どもたちから「学ぶことも多い」という声も少なくありません。保育士として成長できるだけでなく、人として視野や考え方を広げることもできるのではないでしょうか。
様々な子どもたちがいる中で、互いの理解を深めるのに時間がかかることがあります。一緒に遊び、ともに生活する中で、障がいを持つ子どもが「できない」という劣等感を抱いたり、逆に健常児が「つまらない」という物足りなさを感じたりすることもあります。保育士はその間に入り、それぞれとコミュニケーションをとりながら、一人ひとりに寄り添う必要があります。一般的な園よりも高いスキル・幅広い知識が求められる可能性もありますので、『インクルーシブ保育』導入園で働く場合は、事前に保育方針・理念・方法をしっかり理解しておかないといけませんね。
今年4月1日、こども家庭庁は発足と同時にある規制緩和を発表しています。従来、保育園と児童発達支援施設が同一敷地内にあっても、それぞれの子どもが同じ部屋・設備を一緒に使うことができませんでした。保育士も各々の児童を専門に担当し、掛け持ちが認められていなかったので保育士不足に陥りがち。それを「保育室の相互活用OK」「保育士の交流や掛け持ちもOK」にしたのです。以降、『インクルーシブ保育』の推進・導入が全国で加速しはじめています。男性保育士も女性保育士も関係ありません。ベテラン保育士、潜在保育士のみなさんも遅くはありません。興味のある人には、働くチャンスが広がっていますよ。
■監修/新谷ますみ
保育園運営本部で勤務。短大の幼児教育学科を卒業し、保育士・幼稚園教諭資格を取得。結婚後も仕事を続け、出産を機に一度退職。子育てがひと段落して、職場復帰。大切にしている言葉は「失敗しても、じっくり待つ」。

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