2025.06.11
お役立ち情報
子どもの虫歯予防のために、保育士にできる工夫や取り組みって?
6月4日は「虫歯予防デー」、4日〜10日は「歯と口の健康週間」。今年も日本歯科医師会などが様々なイベントや啓発活動を行っていました。子どもたちの虫歯予防は、基本的に家庭の役目だと思います。でも昼食やおやつがある保育園の果たす役割も小さくありません。正しい指導のもと、みんなで歯磨きをすることで、楽しく習慣づけてあげたいですね。そのためにはまず、保育士が「正しい知識」を身につける必要があります。
生え始めたら、すぐに歯磨き開始!
最初に生えるのは「乳中切歯」、下の前歯です。生後6〜8ヵ月頃に顔を出しますが、生えてきたら即、歯磨きスタート。小さな歯と歯茎をやさしく磨いてあげましょう。この段階ではまず歯ブラシを口に入れることに慣れることが最重要。リラックスできる雰囲気づくりが欠かせません。例えば、決まった音楽や歯磨きソングをかけるのもいいと思います。まだはっきり認識はできませんが、「この楽しい曲が流れると歯磨きタイム」という感覚は身につきます。
乳歯はぜんぶで20本。2歳半頃までには生えそろうといわれますが、個人差が大きく前後半年は誤差の範囲です。もし「ウチの子、生えるのが遅いみたい…」と心配する保護者がいたら、「3歳で生えそろってない子も珍しくないですよ」といってあげてくださいね。
もちろん2歳ではまだまだ一人で磨けないので「仕上げ磨き」が不可欠。特に虫歯になりやすいのは「上の前歯(特に真ん中の歯)」、「歯と歯の間」、「奥歯のみぞ」の3カ所です。磨き残しがないよう順番を決めて磨くのがいいと思います。歯磨き粉は必要ありませんし、歯磨き後のうがいができなくても大丈夫。子どもは唾液が多いので自然に汚れが排出されます。ただ、つばを吐くよう促すことは、うがいへの第一歩になるかもしれません。
歯ブラシは毛先が摩耗し始めたら新しいものに交換。乾燥した場所に保管し、他の子のブラシと取り違えないような管理体制・対策も必要ですね。
3歳〜5歳は歯磨きの習慣づけ
(1)歯ブラシを45度の角度で歯と歯茎の境目に当て、優しく小刻みに動かすこと。
(2)すべての歯の表面・裏面を順番に丁寧に磨くこと。
(3)最後に水でしっかりと口をすすぎ、歯ブラシも洗って清潔に保つこと。
もちろん「45度」「小刻みに」なんていっても子どもたちには通じません。「歯ブラシを傾けて、ピタッとなるところを探してみよっか!」「さぁ、誰が歯ブラシを早く動かせるかなぁ?」など、好奇心や競争心をくすぐる言い方を工夫しましょう。
磨き方の指導には絵本も有効です。たとえば『ノンタン はみがき はーみー』では、みんながノンタンと一緒に「イイイのイー」をしてくれます。『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう』では、「しゅっ、しゅっ、しゅっ」の掛け声で歯ブラシを素早くリズミカルに動かせるようになりますね。
ブクブクうがいができるようになれば歯磨き粉をつけても構いませんが、実際は使わない園が多いようです。水で十分ですから。もし使う際はパッケージの表記をよく見て、飲み込んでも大丈夫なものを選びましょう。また「乳歯はフッ素を吸収しやすいので、小さい頃から適度な濃度のフッ素配合タイプを使うといい」「研磨剤は柔らかい乳歯を傷つけやすいのでジェルタイプがいい」という歯科医師の声もあります。
虫歯予防の大切さも知ってほしい
中でも『はははのはなし』は1972年出版の大ロングセラー。歯の役割、虫歯になるメカニズム、歯磨きの大切さなどを分かりやすく伝えることができます。また『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』では虫歯になってしまったワニと歯医者さんのユーモラスなやりとりで、歯医者がどんなところかを楽しく理解できます。
予防歯科の普及、保護者の意識の高まりなどで、子どもの虫歯は確実に減っています。2002年から2020年の18年で、3歳児の虫歯保有率は32.25%から11.81%に、一人あたりの虫歯本数は1.39本から0.39本にと、約3分の1になりました。でもまだ虫歯がなくなったわけではありません。大人になって歯の大切さを再認識し「小さい頃からもっと磨いておけば…」なんて思っている保育士さんもいるかもしれませんね。その気持ちをぜひ、子どもたちのために生かしてください。
※参考資料
『ノンタン はみがき はーみー』 ◇作/キヨノ サチコ ◇偕成社
『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう』 ◇作/くぼ まちこ ◇アリス館
『はははのはなし』 ◇作/加古 里子 ◇福音館書店
『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』 ◇作/五味 太郎 ◇偕成社
短大の幼児教育学科を卒業後、兵庫県で私立幼稚園での幼稚園教諭からスタート。その後、大阪府北摂の公立保育所と私立認可保育所で保育士として勤務。豊富な保育経験・スキルを有する。現在は、保育学生や保育士が安心して働ける環境を実現する活動を株式会社ワークプロジェクトで実践。保育ポリシーは「保育の正解はこどもが決める」。