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2025.07.30

転職コラム

連載インタビュー(1)福井先生に聞く:保育園で何度も残業や土曜出勤をお願いされたら…

梅花女子大学 心理こども学部 心理学科 准教授 福井 斉さん

梅花女子大学の准教授、福井先生に『ほいとも』としてインタビューの機会をいただきました。その模様を3回シリーズで紹介します。初回は保育士として働く中で、イヤな仕事を頼まれたり、自分だけ負担を押し付けられたりしたとき、どう対処すればいいか。モヤモヤする気持ちと、どう向き合えばいいか。心理学を教えていらっしゃる先生に質問をぶつけてみました。

【福井 斉(ひとし)先生プロフィール】

◇梅花女子大学 心理こども学部 心理学科 准教授 ◇社会学博士
研究テーマは「子どもの自尊感情を高める取り組み」。趣味はアニメ鑑賞。熱烈な阪神タイガースファンで「阪神を応援し続けるファン心理をライフワークとして研究していきたい」とも。

「残業になるけど手伝って」といわれたら…

◇ほいとも
保育現場ではよくあるんです。その片付けを手伝わないと明日にしわ寄せが来るのはわかっている。でも残業はしたくない。心理学を教えていらっしゃる先生ならどうされますか?
◆福井先生
それはやっちゃいますね。「喜んで」というわけじゃないですが、もう我慢してやりますね。
◇ほいとも
やっちゃうんですか?モヤモヤされたりしませんか?
◆福井先生
それが何回も続くと「どういうこと?」と確認すると思いますよ。でも突発的なこと、仕方ないことであれば誰かがカバーしないといけませんよね。その誰かが「今回は自分の番なんだ」といいきかせてやります。
◇ほいとも
先生のような保育士がいると、まわりは助かっちゃいますね(笑)

仏の顔は何度まで?

◇ほいとも
一回引き受けると、また頼まれたりすると思います。「仏の顔も三度まで」なんてことわざもありますが、先生の中で「これ以上は無理」という回数はありますか?
◆福井先生
ぼくも3回までは我慢すると思います。
◇ほいとも
「3」という数字には理由があるんでしょうか?
◆福井先生
1回、2回は偶然の可能性がありますが、さすがに3回目は「わかって僕に頼んでるでしょ!」という回数になるという感じかな。それでも頼んできたら3回目まではやりますね。「自分ができるなら」と考えてやると思います。ただ4回目になると、やっばり「おかしいよね」「慢性的になってるよね」と考えるでしょうね。
◇ほいとも
それでも4回目を頼んできたら、どうされますか?
◆福井先生
「どうしたの?何か大変なことでもあるの?」と状況を確認します。そして原因があるなら一緒に解決したいと思います。保育所は特にそうだと思いますが、仕事はチームワークですから。

園長先生から土曜出勤を頼まれたら?

◇ほいとも
同僚からのお願いなら確かにそういう解決策がいいかもしれませんね。では園長から土曜出勤などを頼まれたりしたときは、どうされますか?
◆福井先生
4回目には「僕しかいないんですか?」と正直に聞きますね。自分に期待してくれているのか、誰でもいいのかを含めて、「なぜ僕なのか」を確認します。
◇ほいとも
立場上、園長には聞きにくいと思うんですが、正直に聞くことで関係がこじれたりしませんか?
◆福井先生
前提として僕の中に「仕事は一人ではできない」というのがあって、互いにカバーしあうことで成り立つのかなと思っています。保育園では逆に保育士が園長に迷惑をかけることもありますよね。だから「お互い様」なんです。そして「お互い様」の関係を築くには相手が上席であっても、正直に話したほうがいいと思うんです。

お互い様=信頼関係!

◇ほいとも
これって、心理学的にはどういうことなんでしょう?
◆福井先生
公平理論ですよね。「自分ばっかりで不公平」と感じる気持ちはわかりますが、大事なのは「お互い様だよね」と思えるかどうか。そのためには信頼関係ありきでスタートしないとうまくいきません。相手に「信用できない」「信じられない」といった気持ちを抱いてしまうと、しんどくなっちゃうんです。
◇ほいとも
「お互い様」の関係は信頼の上に成り立つということですね?
◆福井先生
そうなんです。だから不信感を持つ前に「疑問」や「疑念」があれば解決しておくべきなんです。
◇ほいとも
なるほど!それが「上席にも正直に」ということですね。
◆福井先生
はい。でも保育園では公平理論では解決できない人員不足の問題もあると思います。それも上席に正直に相談して、物理的に改善してもらわないといけませんね。

余計な仕事を頼まれて、断ることばが見つからなかったり、断ると嫌われると心配になったり、「自分ばっかりハズレくじ」と落ち込んだり…。そんなとき先生のように「3回までは様子を見る」というのもいいかもしれませんね。そして4回目は正直に話して、問題があれば一緒に解決する!ちょっとモヤモヤが晴れた気がします。

※聞き手:ほいとも・上嶋幹子
梅花女子大学正門
■インタビュアー・監修/上嶋幹子
短大の幼児教育学科を卒業後、兵庫県で私立幼稚園での幼稚園教諭からスタート。その後、大阪府北摂の公立保育所と私立認可保育所で保育士として勤務。豊富な保育経験・スキルを有する。現在は、保育学生や保育士が安心して働ける環境を実現する活動を株式会社ワークプロジェクトで実践。保育ポリシーは「保育の正解はこどもが決める」。

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