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2025.12.03

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「寝なさい」ではなく科学的アプローチを!これで園児の午睡が変わる!

「寝なさい」ではなく科学的アプローチを!これで園児の午睡が変わる!

すぐ寝てくれる子、なかなか寝ついてくれない子、寝てもすぐに起きてしまう子、まわりにちょっかいを出してしまう子…。保育士にとって午睡の時間はある種「戦い」かもしれませんね。でも睡眠のメカニズムを理解し、科学的アプローチをすれば、寝かしつけの苦労が減って、午睡の時間がちょっと変わるかもしれませんよ。

毎日の寝かしつけ、おつかれさまです

みんなが静かに寝てくれると、ちょっとゆっくりできたり片付けができたりしますが、なかなかそうもいきませんね。逆に今日はぐっすり眠ってくれたと思ったら、保護者から「夜、なかなか寝ないので困る」なんていわれたり…。
子どもたちは睡眠に関しても一人ひとりクセがあり、家庭環境も違います。もちろんみなさん、寝ない子の横で添い寝をする、手を握ってあげるなどの工夫をしていると思いますが、全員を寝かしつけるのは大変ですね。
そんなときに試してほしいのが「科学的な知見や根拠に基づくアプローチ」です。「寝なさい」のひとことよりも、効果があると思いますよ。

1)「光」と「活動」のコントロールで体内時計を整える

人間の体には約24時間周期の「体内時計(サーカディアンリズム)」が備わっていて、それが睡眠や起床、体温調整やホルモン分泌などの生理現象を制御しています。特に光の影響は強く、朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に向けて睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が促される仕組みになっています。
だから保育園でも体内時計を意識した「光」と「活動」のコントロールが重要。日中、適度に光を浴びて活発に動くことが、夜の睡眠だけでなく、午後の自然な眠気も誘発します。
眠くなった園児には光のコントロールも必要です。入眠に最適な照度は50ルクス以下で、街灯下より暗く、月明かりより明るく、10m先の人の顔を認識できるくらいが目安。判断が難しければレンタルの照度計(5日で数百円〜)もありますので、ぜひ一度、カーテンや間接照明で調整してみてください。

2)「ホワイトノイズ」で静かすぎない睡眠環境を

眠るには静かなほうがいいと思われがちですが、完全な無音状態はかえって子どもの睡眠を妨げることもあります。静かすぎると、ちょっとした物音や他の園児の声に過敏に反応してしまうからです。
そこで有効なのが「ホワイトノイズ」。これはすべての周波数帯を均一に含む「ザー」といった雑音のことで、他の物音や会話など不規則な音をマスキングしてくれます。会話が妨げられない程度、かつ遠くの物音が気にならない程度の一定の音。保育園なら換気扇の回転音などがこれに当たるといわれます。
最近は専用のホワイトノイズ発生器や、雨や波の音を流せるアプリもありますので、これもぜひ試してみてください。

3)実は「背中トントン」にも科学的根拠あり

何気なくやっている「背中トントン」も科学に裏付けられた入眠法のひとつ。専門的には「タッチケア」といわれ、その仕組みを深く理解すれば、より大きな効果が期待できます。
まず心地よいタッチは「オキシトシン」というホルモンの分泌を促進します。これは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれ、不安を抑え心拍数を落ち着かせる働きがあります。そしてオキシトシンの分泌量を左右するのが、「トントンの仕方」です。
具体的には、大人の鼓動(1秒に1回)程度の「ゆっくりと一定したリズム」が効果的。さらに指先だけでなく、手のひら全体で包みこむように触れると受容体が刺激され、より多くのオキシトシンが分泌されるそうです。いつもの「やさしく愛情を持って」という気持ちに、ぜひ科学の知識を加えてみてください。

4)子どもの発達段階に応じたアプローチを

0〜1歳は体内時計がまだ未熟で、夜と昼との区別もつきにくい状態。個々の生理的リズムが優位に立ち、一斉の午睡が困難です。だから「目をこする」「あくびをする」「ぐずり出す」というサインをしっかり観察して個別に午睡を促すといった柔軟な対応が必要です。
1〜2歳になると、ことばの理解も進み、次に何をするかといった「見通し」に安心感を覚えるようになります。そこで有効なのが「入眠儀式(スリープセレモニー)」。毎日同じ手順を繰り返せば、子どもは見通しを持ち、スムーズに眠れるようになります。
3〜5歳では社会性や理解力が一気に発達し、自立心も育まれます。午睡でも「自分で布団に入って体を休める」という自立した行動を促しましょう。「寝てる間に体が大きくなるんだよ」「午後から元気に遊ぶために、しっかり休もうね」といった声かけで、午睡の効果や意義も伝えるようにしましょう。

とはいっても、寝ない子もいるし…

午睡を必要としない子がいるのも事実です。そんな子には、無理に寝かしつけたり叱ったりせず、「静かに過ごす時間(クワイエットタイム)」を設けてあげるのも一手。午睡をしている子どもたちの横で、一人で静かに本を読んだりパズルをしたり…。これなら「体を休める」という目的も達成しつつ、他の子の午睡を邪魔しないという配慮も学べますね。
ところでみなさんは「子どもたちと一緒に寝落ちしてしまった」なんて経験、ありませんか。それは健全な睡眠を取れていないからかもしれません。寝つきが悪い、夜中によく目覚めるという人は今回の科学的アプローチを、ぜひ自分のためにも役立ててください。明るさ調整やホワイトノイズは大人の睡眠にも有効ですよ。
■監修/上嶋幹子
短大の幼児教育学科を卒業後、兵庫県で私立幼稚園での幼稚園教諭からスタート。その後、大阪府北摂の公立保育所と私立認可保育所で保育士として勤務。豊富な保育経験・スキルを有する。現在は、保育学生や保育士が安心して働ける環境を実現する活動を株式会社ワークプロジェクトで実践。保育ポリシーは「保育の正解はこどもが決める」。

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