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2025.12.10

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転ぶ子・転ばない子の違いを知ることで、「危ない!」で終わらせない保育へ!

転ぶ子・転ばない子の違いを知ることで、「危ない!」で終わらせない保育へ!

元気に活動する中で、子どもたちはよく転びますね。でも頻繁に転ぶ子、転びそうになっても踏ん張れる子、転んでもとっさに手をつける子、いろんな子がいるはず。「転ぶのは注意が足りないから」なんて思われがちですが、実はそれだけじゃないんです。子どもはなぜ大人よりよく転ぶのか。転ぶ子・転ばない子の違いは何か。そのあたりを知れば個々の発達段階に応じた保育が見えてきますよ。

まずは「子どもが転ぶメカニズム」を理解しましょう

少し専門的な話になりますが、人は前庭覚(バランス感覚)や固有受容覚(体の位置や動きを感じる感覚)といった「平衡感覚を司る感覚機能」を持っています。この機能は年齢とともに洗練されていくものなので、未発達な子どもは大人より転びやすいんです。
また、子どもは頭部の割合が大きい乳幼児期から、手足が伸びて重心の位置が変わる学童期へと急速に成長します。この変化に脳が追いつこうとすることで、一時的にバランスを崩しやすくなるともいわれています。

転ぶのは、子どもたちからの「成長のサイン」

転びそうな子、転んでしまった子を見るとつい「危ない!」と声が出てしまいますね。確かに転倒は危険です。でも保育士が「予防すべき失敗」という捉え方しかできなければ、あとは「転ぶのを防ぐ」=「転びそうな遊びをさせない」という対策しかできません。
転ぶことは一人ひとりの発達段階を理解する上での貴重な情報源になります。子どもたちは転ぶことで、自分の身体的・認知的発達を知らせる「成長のサイン」を送ってくれている。そう捉えると園児との関わり方も変わってきますよ。

転ばない子って、どんな子? 5つのチェックポイント

子どもは総じて平衡感覚が未発達です。でもその中でも「よく転ぶ子」と「転ばない子」がいるのも事実。では転ばない子にはどんな特徴があるのか、5つの観点で観察してみてください。

1)姿勢と体幹の安定性
立っていても座っていても、自然と背筋が伸びていて安定感がある。おもちゃを取ろうと手を伸ばしたり、体をひねったりするような動作でも軸がぶれずバランスを保てる。
2)歩き方と足の運び
足が地面から適切に上がり、かかとから着地してつま先で蹴り出すという一連の動作が、安定したリズムでスムーズ。多少の凹凸があってもバランスを崩さず前へ進める。
3)遊び方と体の使い方
身体を使う遊びに積極的で、挑戦的な動きをする。よじ登ったり、高いところから跳んだり、走っている途中で急に方向転換したり、バランス感覚や瞬発力を要する遊びを好む。
4)注意力とまわりの状況把握
常に自分の進む方向を見ていて、小さな障害物や前方で遊んでいる他の子をいち早く察知する。そしてぶつかる前に自然と避けることができる。
5)転んだときの反応と受け身
転びそうになった際、とっさに手を出して体を守る。体をひねって頭部や胴体への直接的な衝撃を避けるなど、無意識のうちに自分の身を守る行動ができる。

このチェックは「転ぶ子」「転ばない子」というレッテルを貼るためのものではありません。子どもたちをしっかり観察し、一人ひとりの発達段階や特性を理解することが目的です。その理解をぜひ、より安全で成長を促す環境づくり、それぞれの身体機能を伸ばす遊び方などのヒントにしてください。

転ぶのは学びのチャンス!みんな少しずつ「転ばない子」に!

5つのチェックに当てはまらない子は「転びやすい子」ということになります。もちろん、そんな子には配慮も必要ですが、転ぶという経験も大事です。
転んで起き上がるという一連の動作は、全身の筋力、特に足腰の筋肉を強化し、バランス感覚を向上させます。また小さな転倒を重ねることで、とっさに手をついたり、体をひねって衝撃を和らげたりする「防御性伸展反応(受け身)」が自然に身につきます。
特に受け身は大きな怪我から身を守るための欠かせないスキルで、繰り返し転ぶことでその基礎が築かれていきます。つまり転ぶことは体と脳にとって重要な「学びのチャンス」。ちょっと変ないい方ですが、転ぶことによって少しずつ「転ばない子」「転んでも怪我をしない子」になっていくんです。

危険な転び方が見られる場合は、専門家への相談も必要

子どもの転倒は成長過程での自然な現象です。「危ないからやめなさい」と注意するだけでなく、一人ひとりをよく観察し、転ぶのを見守ることも必要です。
でも中には顔や頭を強く打つリスクが高い「危険な転び方」もあります。例えば、いつまでたっても転んだときに手が出ない。頻繁に後ろに倒れる。何もない平らな場所で繰り返しつまずく。転ぶ頻度が急激に増える…。
これらの場合は発達に原因があるかもしれません。園長や保護者とも情報を共有し、専門家に相談することをオススメします。

靴が転ぶ原因になることもあります

サイズの合わない靴、足裏の感覚を奪うような硬い靴、底がゴムではなくウレタン製で滑りやすい靴。これらが転倒の原因になることも少なくありません。子どもたちの足元もしっかり観察し、保護者と一緒に改善していきましょう。
もちろん靴は子どもだけの問題ではありません。大人は転ぶと大ごとになりがちです。みなさんも自分の靴を見直してみてください。よくつまずくという人には、つま先の上がった靴もあります。「かかとから着地してつま先で蹴り出す」という動作を助けてくれますよ。
■監修/上嶋幹子
短大の幼児教育学科を卒業後、兵庫県で私立幼稚園での幼稚園教諭からスタート。その後、大阪府北摂の公立保育所と私立認可保育所で保育士として勤務。豊富な保育経験・スキルを有する。現在は、保育学生や保育士が安心して働ける環境を実現する活動を株式会社ワークプロジェクトで実践。保育ポリシーは「保育の正解はこどもが決める」。

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