2026.08.12
お役立ち情報
園児のためにも、自分のためにも、「大きな声」より「届く声」「伝わる言い方」を!

すべり台の上で押し合いをしていたら「危ない!」、散歩の列から飛び出して走り出したら「ストップ!」。保育現場ではつい大声になる場面が少なくありませんね。ケガをしそうなとき、全体の動きを一瞬で止めないといけないときなどは、なおさらです。でも大きな声を出し続けると園児にも保育士にも、よくない影響があるんです。ここは発想の転換!大声より「届きやすい声」や「伝わりやすい言い方」を心がけてみませんか。
どうして「つい大声」になっちゃうんでしょう?
自分が子どもたちをしっかり守り、導かないといけない。そんな強い使命感を持つ保育士ほど、声が大きくなりがちです。特に「小さな声で動いてくれなかった」みたいな経験をすると、「指導力が足りないのでは…」という自責の念、「これじゃ安全を守れない」という恐怖心が生まれ、気づけば「いつも大きな声」になっていたりします。
もうひとつ、外的な要因もあります。木造住宅なら壁・絨毯・カーテン・布製家具などが音を吸収してくれますが、最近増えてきた鉄筋コンクリートの園舎の吸音要素が少ない部屋では音が反響しやすくなります。
「残響時間」が長いと室内に喧騒感が生まれ、声が聞き取りにくくなります。特に幼児は雑音の中から特定の声を聞き分ける「選択的聴取」が未熟。だから保育士は物理的に声を張り上げざるを得なくなる、という指摘があるんです。
実際、教育現場や聴覚研究の指針でも、騒がしい環境下で子どもに音声を理解させるには、背景雑音より15〜20デシベル以上大きな音量を確保することが推奨されています。
喉にも、気持ちにも、悪影響しかない!
さらに一日中「叫ぶように言わないと伝わらない」という緊張が続くと、精神的な疲労も増大し、夕方には心身ともに擦り切れてしまいます。最終的には「それでも声を小さくできない」というジレンマ、喉を酷使し続ける苦痛、思うように保育が進まない焦燥感などが重なり、保育士としての自信や楽しささえ見失いかねません。
いつしか、子どもたちにも届かなくなる!
また命令調の大声は、子どもに「怖い」「叱られている」という威圧感や恐怖感を与え、萎縮を招きます。こうした関わりが続くと信頼に亀裂ができて、子どもたちが不安定になり、クラスがザワザワと荒れやすくなる。そんな悪循環に陥ります。
【対策1:届く声】強弱や抑揚で反応が変わる!
<子どもたちを惹きつける「小さな声」>
ザワザワしているときは、あえてひそひそ話のように話しかけてみましょう。子どもたちは「何を話してるんだろう?」「聞き逃したくない」と好奇心を刺激され、自然に耳を澄ましてくれます。絵本の読み聞かせでも「静かにしなさい!」と大声を出すより、先に集まった子たちに小声で読み始めるのが効果的。「聞こえないから静かにしよう」なんて声が、子どもたちから自然に上がりますよ。
<「抑揚」や「間」で物語のように話す>
物語の語り手のように、声の高さやテンポに変化をつけ、要所に「間」を置くことで、子どもの集中力を高めることもできます。例えば「実はね…」のあとに3秒ほど間を置くと、子どもたちは「次はなに?」とワクワクしながら想像します。話すスピード、トーン、メリハリに気をつけると反応が変わってきますよ。
【対策2:伝わる言い方】呼びかけ方、言葉選びを意識!
<あえて「子どもの名前」を呼ぶ>
「みんな」と呼びかけるより、一人ひとりと目を合わせて名前を呼んでいくと、伝わり方も変わります。「○○ちゃん、準備できた?」「○○くんは、かっこよく座れてるね」と続けていくと、まわりの子は「次は自分の名前かも」とドキドキしながら先生に注目するようになります。
<「ポジティブな言葉」を選ぶ>
「静かに!」と頭ごなしに注意せず、まず子どもの気持ちを肯定的に受け止めてみましょう。騒がしい子には「お話ししたくてたまらなかったのね」と気持ちを代弁したり、それでも話し続ける子には「優しい声で話してくれて嬉しいな」と褒めてあげたり…。穏やかなやりとりの中で、子どもたちは話していい場面・ダメな場面をわきまえるようになってきます。
<「ダメ」ではなく「こうしよう」>
「騒がない!」といった否定的な命令口調は子どもにストレスを与え、逆に何をすべきかが伝わりにくくなります。「アリさんの声でお話ししようね」「廊下は優しく歩こうね」と、望ましい行動を具体的・肯定的に伝えてみましょう。これが「静かに!」よりも効くんです。
【対策3:視覚的効果】ジェスチャーや手遊びを取り入れて
<「サイン」や「ジェスチャー」も効果的>
例えば次に何をするかをイラストや絵で示すと、子どもたちは言葉以上に注目してくれます。気持ちが高ぶって騒ぎがちな子には「声が大きい」と注意するより、指を口に当てるサインや、「ボリュームを下げようね」という手のひらを上下させるジェスチャーのほうが、しっかり伝わることがあります。
<「手遊び」や「ファンタジー」を盛り込む>
定番の手遊びの最後に「トントンおくち」と口に手を当てる。「あめ玉をどうぞ」と口に入れるふりをする。すると子どもたちは楽しみながら自然に口を閉じてくれます。またファンタジーの要素を取り入れて、「みんなが静かになる魔法をかけるよ!」と魔法使いになりきるなど、子どもたちの世界観に寄り添ったアプローチも有効です。
家族や友達に「いつも声が大きい」と言われる前に、ハスキーボイスになっちゃう前に、ぜひ今回の対策を試してみてくださいね。
短大の幼児教育学科を卒業後、兵庫県で私立幼稚園での幼稚園教諭からスタート。その後、大阪府北摂の公立保育所と私立認可保育所で保育士として勤務。豊富な保育経験・スキルを有する。現在は、保育学生や保育士が安心して働ける環境を実現する活動を株式会社ワークプロジェクトで実践。保育ポリシーは「保育の正解はこどもが決める」。